(富士川駅)~蒲原~由比2012.11.4
9:36AM、富士川駅前の昨日と同じ歩道橋に立って見ると青く澄んだ空の下、クリアな富士山がそびえている。
駿河に入って5日目にしてやっと富士を見ながら歩けそうだ。
今日はスタートから僕がベビーキャリーmacpacポッサムで娘を背負って歩く。
旧東海道は緩やかに坂を上る。
時々振り返っては富士を見る。
東名高速道路をまたぐ橋を渡る直前に、電線に邪魔されない富士を見ることができた。
高速道路をまたぐと今度は住宅街の中を急激に下る坂道だ。
前方に駿河湾が見えて来た。
途中、広重の浮世絵『東海道五十三次之内蒲原 夜之雪』が大きな看板となって立っている。
シリーズ中特に傑作として名高いこの絵が写生されたのはこの辺りだということらしい。
確かに手前に坂道があってその向こうに山というごく大雑把な構図としては近い気がする。
10:56AM、明確な桝形が道筋に残る東木戸跡を通って蒲原宿に入る。
蒲原は細くくねる道筋と点在する旧家屋が旧宿場町の雰囲気を感じさせる。
11:14AM、宿場散策を中断し蒲原城へ行くためのタクシーを拾いに蒲原駅に向かう。
その途中「蒲原夜之雪記念碑」が建つ小公園があり、静岡市が書いた説明板では広重はこの近くで写生をしたと断定している。
現在では、広重は実地へは行かず他人の絵の構図を借用して『東海道五十三次』を描いたという説が有力になりつつあるが、地元では黙殺されているようだ。
蒲原駅前で拾ったタクシーを山の中腹の駐車スペースで降りる。
そこから10分ほど山道を登ると蒲原城の本曲輪に達する。
南側に由比の海岸線とさった峠が見下ろせる。
この絶景を眺めながら沼津駅で買った弁当を食べていると立派なカメラを持った男が登って来た。
勿論お城ファンだろう。
本曲輪からの絶景を撮りに来たのだろうが、僕らがいるせいで著しくアングルが限定されたのではないだろうか。
しかも、荒涼たる曲輪側を写して「兵(つわもの)どもが夢のあと」的な写真を狙おうにもそこには娘が持って来た犬型の風船“ハートちゃん”が置いてあって雰囲気ブチ壊しだ。
申し訳ない。
1:27PM、蒲原城から戻り宿場散策を再開する。
すぐに旧旅籠の家屋を活用しているお休み処で休憩させてもらう。
娘はおばちゃんにミサンガをもらった。
2:02PM、かなり大掛かりな桝形を通って県道396号線に合流し蒲原宿を出る。
思えば東海道を歩き始めてから初めての宿場らしい宿場だった。
県道396号線は幹線道路ではあるが、道筋の微妙なくねり具合や高低差が旧道風情を多少なりとも感じさせる。
途中格子戸の旧家屋が街道の湾曲に沿って3軒並んでいた。
2:56PM、これも明確な桝形を通って由比宿に入った。
細い街道沿いに旧家屋が点在するのは蒲原と同じだが、蒲原がしっとりと落ち着いた雰囲気だったのに対し、こちらは港町特有のゴチャゴチャ感のようなものが感じられる。
本陣跡の広大な敷地の中に東海道広重美術館がある。
入館料500円を払って見学。
広重は横長よりも縦長の絵の方が構図の大胆さが際立って魅力的だと再認識。
そう思って見ると、縦の『江戸百景』に比べて横の『東海道五十三次』には広重らしい才気のほとばしりが乏しいような気がしてきた。
それは構図を他人の絵から拝借しているからだろうか?
由比川を渡って由比宿を出る。
道は細かな蛇行と起伏を繰り返し、その先には立ちふさがるように山がそびえている。
中山道上州路以来僕の好きなロケーションだ。
歩きながら何枚も写真を撮る。
尚、娘は僕から女房を経てこの時点では女房の兄貴が背負っている。
由比駅の直前で旧東海道は右折して道幅150cmほどの路地に入る。
両側から民家がせり出して来て圧迫感がかなりある。
こんな路地なら地元向島界隈にもよくある。
4:05PM、その路地が旧東海道を離れて由比駅へと分かれるポイントを今日のゴールとして由比駅へと向かった。
単調だった駿河路も、きのう富士川を越えた途端に道は細くくねり、高低差も生じて街道風情が感じられるようになった。
さて次回はいよいよさった峠を越える。
広重の浮世絵にも描かれた東海道で最も有名な富士見の名所なので今度こそはこの目で富士を見たいものだ。